卒婚元年は58歳3ヶ月

興味深いデータを見つけましたのでご紹介します。
博報堂生活総合研究所「月間!生活総研」によりますと、「卒婚を始める」のは「58歳3ヵ月」とのことです。
出典:令和の生活寿命〜「徹夜できる」のは何歳まで? | 今月の特集 | 月刊 生活総研(2025年3月号)
URL:https://seikatsusoken.jp/gekkan/coverstory/reiwa-seikatsujumyo/出典:「美白」「行きつけ」「よっこいしょ」…新行動が生まれる年齢『生活元年』からみえた転機とは | 今月の特集 | 月刊 生活総研(2026年3月号)
URL:https://seikatsusoken.jp/gekkan/coverstory/seikatsugannen/
「信号ダッシュ寿命」や「誕生日嬉しくない元年」などは妙になるほど!で、思わず笑ってしまいました。
夫婦の寿命と元年
この「月間!生活総研」の年表から、夫婦にまつわる「生活寿命」と「生活元年」を抜粋し、時系列にしてみました。
29歳6ヵ月 婚活元年
結婚するために婚活を始める
48歳1ヵ月 小言寿命
妻/夫や子供にいくらいっても直らないので、あきらめて小言を言わなくなる
51歳3ヵ月 夫婦別行動元年
休日などに夫婦で別々の場所に外出するようになる
52歳3ヵ月 結婚寿命
結婚や再婚をする気がなくなる
53歳5ヵ月 手つなぎ寿命
夫婦で手をつないでの散歩は、恥ずかしくてできなくなる
56歳4ヵ月 無言元年
配偶者やパートナーとの会話が少なくなり、ほぼ無言になる
58歳3ヵ月 卒婚元年
卒婚を始める
50代からの夫婦のリアル
こうして見ると、夫婦関係に変化のきざしが訪れるのは、50代に集中していることがわかります。
確かに、50代といえば身体的な変化に加え、子どもの独立やキャリアの円熟、親の介護など、これまでの生活を支えていた役割が次々と節目を迎える時期です。
この年代の価値観やものの考え方は、長い歳月を共に歩んできた夫婦の関係性にも大きな影響を与えるのでしょう。
この統計データは、現代日本人のリアルな一面が如実に表れていると思います。
昨今では、卒婚や熟年離婚といった選択も広く知られるようになりましたし、お互い納得の上で、それぞれが望む新しい人生を選択するご夫婦が増えていることも事実です。
もちろん、その決断に至るまでには、多くの苦悩や葛藤、そして言葉にできないくらい複雑な想いがあったはず。
こうした大きな転機に直面したとき、一人で抱え込み、考え続けるのは限界があります。
そこでヒントにしてほしいのが、ブリッジスの理論です。
終わるとき
ブリッジスとは「トランジション理論」を提唱した心理学者ウィリアム・ブリッジス(Bridges, W.)のことです。
この理論で、ブリッジスは「人生の転機」(トランジション)を、「古い状況から抜け出し、過渡期の混乱を経験し、そこから新しい状況に向かって再び前進し始めるプロセスである」と説いています。
ここで重要なのは、変化とは「何かが始まること」ではなく「何かが終わることから始まる」という考え方です。
何かの終わり
↓
ニュートラルゾーン
↓
新たな始まり
ブリッジスは、「すべてのトランジションは何かの終わりから始まる。新しいものを手に入れる前に、古いものから離れなければならない。それは、外側の環境だけでなく、私たちの内面にもあてはまることだ」と述べています。
トランジション理論の応用
もし、夫婦の間に大きな変化が訪れたときは、以下の視点を持ってみてはいかがでしょうか。ブリッジスの理論を参考にして考えてみました。デメリット付きでご提案します。
何かの終わり期
本音を出しあう
古いシステム(価値観や役割)を抱えたまま、新しい環境に突入するのではなく、古いものを一旦終わらせるために、お互いの「今の本音」をテーブルの上に出しあってみる。
デメリット
「本音を出し合う」ことは、必ずしも前向きな結果につながるとは限らない。むしろ、関係の破綻を決定づけるきっかけになるリスクがある。
ニュートラルゾーン期
調整する
パートナーに尊敬と感謝をしつつ、自分自身も大切にしながら、「これまでの形」に固執するのをやめ、「今の私たち」にふさわしい形へと調整してみる。
デメリット
ダラダラと調整し続けて、決断を先延ばしにしたり、変化から逃れる言い訳になったりする。
新たな始まり期
デザインする
より心地よい距離感や役割へと、夫婦の関係性をクリエイティブにデザイン(またはRedesign)してみる。
デメリット
協力し合えるのは、ある程度の信頼関係が残っている場合に限られる。憎しみ合っていたり、相手への関心が薄れている状態では、このクリエイティブなアプローチは機能しない。
夫婦の転機
一般的に、「終わり」に対して恐怖心や抵抗感があると、多くの人は外側の変化をどうにかしようとします。
しかし、実際には、内なる自分に気づいていないか、自分の心が現実に追いついていないために悩んでいるというケースが見受けられます。
たとえば、自分には混乱や迷いがあって、不安が続いているなと感じたら、このブリッジスの理論を思い出して、
「私は只今、絶賛調整中!」
と自分で自分に言い聞かせてみましょう。そうすることで、今の乱れた自分を認めることができます。
これは単に「気持ちが楽になる」だけではなく、自己肯定感を守ることにつながります。そして、次なるステップへ進むためのポジティブなエネルギーを生み出します。心にも余裕が生まれるので、パートナーを傷つけることなく話し合うことができるようになります。
しかしこれは相手のある話ですから、実際にはパートナーと意見が食いちがうでしょうし、何でも理屈で割り切れるものではありませんので、結果として、お互い心の底から納得し合うことはできないかもしれません。
それでもこのブリッジスの理論は、夫婦が理解し合うためのフレームワークの一つとして価値あるものだと思います。
もし「卒婚」というワードがチラつくようであれば、ぜひこの理論を上手に活用してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

矢部 和也
キャリアコンサルタント
日本キャリア・マネージメント・カウンセラー協会会員
アメリカカウンセリング協会会員
産業能率大学で心理学を学んでいる社会人学生です。夫婦の関係性について社会正義の視点で研究しています。テーマは「個人心理と社会構造から見る現代夫婦のあり方について」。夫婦の幸せを“心の問題”と“社会の仕組み”の両面から捉え、新しい夫婦の形を提案しています。


